自分たちも、会社も、業界も、
確かな価値を持つために

アートディレクター
Kazuyuki Takeda / 竹田 和幸
PROJECT

Client

日本航空株式会社[以下、JAL]

Delivered

リサーチ、プランニング、情報設計、クリエイティブディレクション、アートディレクション、デザイン、撮影、動画ディレクション

Summary

JALコーポレートサイトのリニューアル案件は、数社の競合コンペで始まった。提案段階から綿密なプランを提出し、無事に受注。以降はサイト全体の情報設計や進行管理、デザイン、撮影など、サイト制作のすべてをオールインワンで担当した。クライアントの企業規模ゆえにハードルは高かったが、存在感のあるWebサイトを作るべく、力を尽くした。

Team

妥協のないものを
つくるための“何でも屋”

プロジェクト全体を見渡して、ディレクションを担う竹田。デザインの細かな部分は、基本的に若手デザイナーに経験してもらえるよう采配を振る。しかし今回は、とことんよいものを作るため、撮影や編集といったコンテンツ制作の細部にまで竹田が目を配った。

関わる人材…プロデューサー、ディレクター、デザイナー、デベロッパー、スチールカメラマン、動画カメラマン、映像ディレクター、映像編集、ライター

提案に説得力を持たせる
“情緒”と“理性”

コンペが始まったとき、チームには竹田ともう一人のディレクターがいるのみ。提案までの競合調査や課題の抽出、全体の情報設計といった下地作りを、その2名で担うこととなった。
「ディレクターは理性的でリサーチ好き。だったら自分は、感覚的にやろうと思いました。制作したものに説得力を持たせるには、情緒と理性の両方が必要だから」
まずは競合他社をはじめ、さまざまな業界の企業サイトをチェックする。誰もが飛行機に乗る時代、いま以上にJALの魅力を感じてもらうためには、どんなトップページを作ればいいのだろうか。見たいと思える仕掛けやコンテンツを、念入りに検討していく。

理論に基づく下地をつくったら、細かいことを考えずに、手を動かしてみた。毛色の違う提案をいくつも組み込んで、できた提案資料は数百ページ。「自分もディレクターも、飛行機や旅行が好きだったから」と、竹田はこともなげに言う。
まだコンペの段階だというのに、モックも作った。「撮りたい動画などのイメージを伝えるために、平面的な提案資料では難しくて……エンジニアに頼んだら、思った以上に作り込んでくれて、そのこだわりがうれしかったです」
かくしてフォーデジットは、無事にJALコーポレートサイトリニューアル案件を受注する。

相手のオーダーを感じ取って
美しく具現化していく

コンペで提出した企画案は、ほぼGOが出た。「旅に行きたい」「安心・安全・機能的な飛行機に乗りたい」「航空関係の仕事に就きたい」……JALが叶えるさまざまな夢。それらを魅力的に見せるためのコンテンツを、形にしていく。
「クライアントが細かく指示をする必要はなくて、僕らデザイン側の人間がオーダーを感じ取るものだと思っています。こうしたら相手が喜びそうだな、というのを推測して、具現化するのがデザイナーの仕事です」と、竹田。そんな彼のディレクションに基づいて、3名のデザイナーが手を動かしていく。

サイトトップには、タイムラプスで撮影した空港の映像を配置した。
JALのさまざまな仕事がすべて主役に感じられるような、1時間くらい眺めていたくなるような動画を作りたかったんです。タイムラプスにしたことでストーリー性が強まったし、仕事の正確さもにじみ出ていると感じます」
撮影には、大変な手間がかかった。ロケハンから含めると、空港と整備場に何日通ったかわからない。撮影には何週間も前から予約をしなければならなかったが、当日は運悪く大雨。「でも、雨のおかげで夜のカットがきれいですよね」と、微笑む。Webサイトのトップをゆく飛行機の姿は、たしかに雨粒がにじみ、とても美しい。

理屈に裏付けられた
力強いアウトプットを

フォーデジットの制作物は、感覚だけのデザインではない。確かなリサーチと情報設計に基づいて、理性的に作られている。たとえば今回トップに配置された動画も、ただの飾りではなく、イントロダクションという明確な役割を担っている。
「理屈があれば、アウトプットも自然と出てくるんです。逆に言えば、導き出したゴールが正しいことを、ちゃんと証明できる裏付けがあればいいと思っています」
でも、機械にできてしまうような証明作業なら必要ない。まとめた情報を使って、自分で考えながら正解を導き出す“デザイン”が、フォーデジットでは求められている。

提案書に挙げたプランで実現できたのは、じつは半分ほどだという。だが、時間と予算と工数はトレードオフ。どこをどれだけ融通するか、クライアントとすりあわせながら全体のバランスをとって進めていくことも、アートディレクターの役割だ。
「ローンチしたプロジェクトを見直すと、手を入れたいところもいっぱいあります」と、自嘲ぎみに言う。だが、その向上心があるからこそ、よいものを作り続けられるのだろう。

意志のあるデザインが
業界を盛り上げていく

企業サイトを作るなら、人間同士が仲良くなるための自己紹介がどうあるべきかを考えること。まずは、自分たちの中身を見せて、魅力を感じてもらうことから始まるのは、当たり前のストーリーだ。
「UXっていう言葉、本当はどうにもしっくりこないんです。だって、デザインのなかでふつうに入っているべきものだから」と、竹田は言う。
ビジュアルをつくるだけでなく、目的を考えて、細かい導線も含めて描くことが、デザインだ。その方向を見誤ると、デザイナーは手を動かすだけの存在になってしまう。

「価値のあるものを作り続ければ、僕たちやクライアントだけでなく、クリエイティブを取り巻く世界が変わっていくと思っています。僕はいつも、デザイン業界がもうちょっとよくなったらな、と思いながら仕事をしているんです。デザインという働きをちゃんと持続させるためには、商業活動を超えて、文化活動にしていかないといけない。そのために僕は、妥協しないでものを作り続けたいんです」
竹田の視界は広く、ずっと遠くを見ている。