Design×ITの今と未来
フォーデジット×NTTデータ座談会 後編

NEWS 2019.03.15
 
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デジタルテクノロジーの進化により、私たちの生活や社会、ビジネスは大きく変わろうとしています。デジタルエクスペリエンスやサービスが広まる中、フォーデジットは「未来のあるべき姿」をユーザー中心に体験を描き、デジタル領域のコンサルティングから制作・アウトプットまで手がけてきました。2018年にNTTデータと資本提携を結び、クライアントの課題解決に向けた取り組みを加速させています。
そもそも文化も考え方も違うIT会社とデザイン会社が協業すると、さまざまなすれ違いが生まれるのは当然。そこでフォーデジットとNTTデータ、それぞれの立場から「Design×IT」の現場で起こるリアルな問題と、今後の展望を語る座談会を開催。その模様を前後編でお届けします。前編は こちら

後編では、フォーデジットとNTTデータのデザイン×ITチームが「お客様企業にどんな価値を提供し、どのようにUXに巻き込んでいくか」がテーマ。サービスデザインという考え方をベースにお客様企業のビジネスをサポートするときの課題についても、興味深いトークが続きます。お楽しみに。

田口 亮 Ryo Taguchi
フォーデジット
代表取締役

大学卒業後 、音楽活動およびフリーのデザイナーとして活動ののち、2002年にフォーデジット入社。2008年同社取締役就任。2012年、HCD-Netの「人間中心設計専門家」に認定。同年フォーデジットデザイン設立。2014年、クリエイティブサーベイ設立。2017年からフォーデジット代表取締役。

末成 武大 Takehiro Suenari
フォーデジット
取締役

大学卒業後、制作会社、NTTDスマートソーシング、ワークスアプリケーションズグループ子会社を経て、2014年フォーデジットに入社。2016年フォーデジットデザイン取締役、2017年フォーデジット執行役員、2018年に取締役就任。

龍神 巧 Takumi Ryujin
NTTデータ
製造ITイノベーション事業本部 コンサルティング&マーケティング事業部
ビジネスデザイン統括部 コンサルティング担当 部長
ITSP本部 サービスデザイン統括部 DX担当 部長兼務

ITコンサルを皮切りに、約15年、企業の収益向上に注目したデジタル活用企画に注力。特にモバイル、ペイメント、デジタルマーケティングなど、企業と生活者のエンゲージメント形成領域に強みを持つ。またシニアマネージャーとして、新規コンサルティングやITサービス企画、パートナー開拓、複数のチーム運営などを実施。フォーデジットとの資本・業務提携を主導。

UXがスムーズに推進しない理由—
企業内のセクショナリズムとヒエラルキー

龍神:サービスデザインに対するお客様企業の意識についてはどう感じていますか?

田口:今の時代、もうどう考えてもユーザーにとっていいものを提供しないとダメ。ですから「顧客の体験がどうあるべきか」からモノ作りを考えるという感覚は、どのお客様も持ち始めたと思います。でもまだ「サービスデザイン」とか「ユーザー体験(以下UX)」とかいう言葉は、高尚な考え方っぽく聞こえてしまうような雰囲気はあるのかもしれません。

末成:ひと昔前の「たぶん売れるだろう」でモノ作りをすると、「売れなかったので50%くらい作り直し」なんてことが頻発する。そうなるくらいなら、早い段階から少ないコストで「ユーザーにとって価値あるもの」として磨き上げてからリリースしたほうがいい。それこそがお客様企業にとっての「価値」ですよね。でもそれを実現するには、今までとは違う考え方にトレードオフしなければならない。そういう舵切りが上手じゃないのが日本の企業の特性なのかな、と思うことはあります。

田口:UXに対する認識そのものは企業ごとに進化していると思うのですが、舵切りがうまく進まない理由の一つに、組織におけるセクショナリズムの問題があると思っています。

末成:例えばマーケティング部門のお客様と仕事をしていると「やっぱりエクスペリエンス大事だよね」となって、そこからアプローチするんですが、実際マーケティングツールの話になると、僕たちデザイン側はリーチしづらい。すると「それはIT部門に言ってください」と、いったん話が途切れてしまう。一方でIT部門からの発注となると「マーケティングどうするの?」「これはCX(顧客体験)の話じゃないですか?」と、やはり途切れます。入り口はマーケティング寄りだけれど、それを享受する出口はアプリケーションなどのIT寄り。サービスそのものには経営戦略も絡んできます。そういうとき「部署の壁」がなかなか乗り越えられない。

田口:本来「ユーザーにとってより良いものを提供する」という目的は一緒。でも「ITかマーケティング、どちらかが主導して」というやり方だと、パワーバランスとか声の大小の話に陥りがち。結果、本当に行きたい方向をみんなが見なくなってしまう。

末成:ヒエラルキーの問題に阻まれることもあります。チームで検討を重ねてきたのに、“偉い人”のひと言で構想が覆るとか、違う方向に進まざるを得なくなるとかいうケースは、どんな業界においてもよくあることですよね。でも、プロセスがサークルを描くデザイン×ITの領域においては、それではうまくいかない。

龍神:そこを我々がどうサポートしていくかは大きな課題ですね。

部署ごとに“異なる言語”で語られるUXを、どう“通訳”するか

龍神:UXの捉え方は、企業によってもずいぶん違います。IT寄りの企業だと、社内でデザインとかモノ作りを内製しているし、ITやデジタルを踏まえたビジネスをしているので、UXのデザインプロセス(※図2参照)は比較的受け入れられやすい。どの部署の人もデザインやITについての感覚が似ていて、いわば「同じ言語」で話すことができるからです。一方で、比較的トラディショナルな事業をしていた企業が「やっぱりデザイン大事かも!」とUXを検討し始めると、かたや日本語でしゃべり、かたや中国語、かと思えばオランダ語、みたいな現象が起こる。

末成:ああ、ありますね。みんなUXの話をしているのに、それぞれのUXに対する認識が違いすぎて意思が通じない。マーケティング部門、IT部門、経営、それぞれ視点が違いますから。

龍神:となると、問題はどう通訳するかですよね。誰かを通訳に立てるのか、それとも全員が新しい言語を学ぶのか。はたまたカタコトで会話し続けるのか。

末成:そもそもNTTデータとフォーデジットのアライアンスも、IT側とデザイン側の言葉の壁、ありましたからね。言語のすり合わせ方を学ぶいい練習になりました。

龍神:そうそう。そういう経験をもとに僕らが通訳になるということも大事だけれど、お客様企業の中に、UXに理解があるアンバサダー的な人が何人か出ると、着実にプロジェクトは進めやすくなると思います。

末成:ただ企業内で「体験を作る体験」をしたことのある人って、まだまだ少ないと思うんです。UXにふわっと興味がある人はいても、プロセスがサークルを描くことを理解してくださる方はごく少数です。

龍神:ああ、「ユーザーを知る」とか「もっと知る」というプロセスがあることは知っていても、継続して循環させるというデザインプロセスの本質までは、経験したことがないからわからない。

末成:そういう状況で何が起こるのかというと、プロセスの一部を「点で買う」という現象なんです。「プロトタイピングまでしてくれたらOKです」というようなオーダーだと、僕らも一部分だけしかお手伝いできません。残念ながら「じゃあここから先は、お客様だけでがんばってください」としか言いようがないケースも出てきます。

田口:UXが企業文化の中にさらされると、先ほどのセクショナリズムに通じるバイアスがかかってきます。例えば、戦略コンサル部門がUXを考える場合、当然ビジネス的な成果が求められます。僕らもお客様企業のビジネスと接続することは考えているのですが、「売上につながるエクスペリエンス」という考え方になってしまうと、「それ、ユーザーにとってのエクスペリエンスとは違ってきませんか?」と。

龍神:サポートする僕らとしては「本当にユーザーにとって大事なこと、本当に今譲れないのは何ですか?」ってことを共通言語にして、お客様企業と一緒に考えていく。そういうスタンスが大事なのでしょうね。

UXの理想形は、経営、マーケティング、
ITが三位一体になって取り組むこと

田口:結局、企業内でどこかの部門が、部門の形を守ったまま単独でUXをやるというのは、ちょっと難しいのかもしれません。

末成:僕も、マーケティング部門、IT部門、経営の三者が一緒になって考えないとそもそも無理なんじゃないかという気がします。

田口:そもそも論になったので「体験デザインとはどうあるべきか」という話をしましょう(笑)。「体験デザイン」という言葉が知られるようになってから、僕が一番クリティカルな出来事だったと思うのは、ドナルド・ノーマンが1990年代にアップルコンピュータにUX部隊を作ったこと。ノーマンはこのとき、各部門の上に位置する横断組織としてUX部隊を設置しました。つまり「UXを一番上に据えます」ということで、各部門に対し「NOと言えるUX部隊」だったわけです。これはいいですよね。ただ、既存の組織でこういう部署を作るのは、現実的には難しいのでしょうね。

龍神:UXにとっての理想像は、田口さんがおっしゃったみたいに、企業内で「UXに基づき判断する」みたいな意思決定プロセスや、組織体制などができあがっていることですよね。でも、今の段階では、現実的ではない。ではどうしたらいいか。
私としては、「経営、マーケティング、ITの3つを、UXという言葉でつなぎ合わせる」だと思っています(※図4参照)。組織の枠はなかなか超えられないけれど、3つの部門の中心にUXを据えて、クロスファンクションなチームを作るというのが、平均的な解かもしれません。時限立法的な組織をバーチャルに作るという方法もありそうです。いずれにせよ、今の組織の中で意思決定がしやすい場所に、部門をまたいだチームを作ればいいんじゃないかと思うんです。

田口:組織における現実的な問題は、意思決定以外にもありますよね。例えば予算の出しどころによってプロジェクトの捉え方はずいぶん変わってきます。マーケティング側の予算ならPL(損益計算書)に直結するから「今年度中に何かやって」という感じになる。

龍神:なるほど。IT側だと減価償却になるから、プロジェクトの継続性が高くなるけれど、最初のハードルがすごく高い。トップに近い経営側だと、僕らにとっては比較的楽かな?

田口:話が早いです。最近、トップに近い方が僕らを応援してくれるケースも増えてきました。上層部の方は、やはり世の中のムードとか、同業他社の動きに対して感度が高い。腹落ちまではしていなくとも、ひとまず「UXは大事」という認識を持ってくださる方、多いですよ。

龍神:いずれにせよ、僕らは企業内で共通言語としてまだ十分溶けきっていないUXを、いかに溶けやすい形にするかをもっと考えなければいけないし、この3部門の人たちと常にそういう会話をしていかなければいけない。

田口:NTTデータとフォーデジットが1枚岩になって、3部門の人に対し、同じ言語で提示できるだけでも、かなり進むんじゃないでしょうか。僕らが同じ言語を使い、3部門の人をつなぐような事例を積み重ねていけば、きっと推進力になるはず。

UXを推進するための3つの課題—
実装を増やす、効果の測定、情報発信

田口:お客様企業をサポートする僕らの側でも、解決しなければいけない課題はたくさんあると思っています。僕が今、一番大事だと思っているのは、実際のアウトプットを見える形できちんと出すということ。よく「UX視点でやると、近未来の全く新しいサービスみたいなのが出てくるんでしょ?」なんて言われるんですけど……。

龍神:ああ、「Amazon Goみたいなのでしょ」とか(笑)。

田口:そうそう(笑)。フューチャービジョン的なものを期待されちゃう。でも実際は、現実世界の地続きにあるべきだと思うんです。だからこそ、僕らは世の中にきちんと実装されるものを出し続けていくことを大切にしています。

龍神:数あるデザイン会社の中で、僕がフォーデジットと仕事をしたいと思ったのは、まさに今おっしゃったような姿勢を持っていらっしゃるから。少し先の世の中のことも考えつつ、最終的には現実のエンドユーザーに向けて価値にちゃんと落とし込もうとしてくれる。モノ作りに関わってきたIT屋としては、実装されなければ本懐を遂げられません。

田口:もうひとつの課題は、UXの効果測定の問題。「このプロセスをやった結果、ユーザー体験がこれだけよくなりました」と証明するのは、すごく難しくて。「UXに取り組んでいる企業は、取り組んでいない企業の〇倍です」みたいな言い方ができればいいんですが、なかなかそうはいかない。まず継続して実装するケースを増やさないと。効果測定をしようにも、継続事例がないことには、データが取れませんから。

末成:「継続して」という意味では、場所作りも必要だと思います。システムを実装して、ユーザーの反応を見ながら、改良を繰り返せるラボがあるといいですよね。「システムが追いつかないところは、人が走る」くらいの気持ちで進めれば、デザインプロセスのサイクルをスピーディーに回すことができる。

龍神:それ、すごくやりたいですよね。さらに言えば、サービスデザインという考え方が当たり前になるくらいまで、僕らがお客様企業への提案はもちろん、世間に向けた情報発信を続けていくことも大事だと思っています。NTTデータ&フォーデジットが、サービスデザインの仕組みをサポートし続けていることも含めて。

田口:一緒にがんばっていかなければいけないですね。

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